青い空を見上げる。風が頬に触れる。
木々の間から光が差し込む。
海の音を聞く。
土の匂いを感じる。
そんなとき、なぜか少し、
呼吸が深くなることはありませんか。
私たちは自然を見て、
「きれいだな」「癒やされるな」と思います。
でも今日は、
もう一歩先まで考えてみたいと思います。
私たちは、自然を眺めている存在なのでしょうか。
それとも、私たち自身も、自然の一部なのでしょうか。
私たちは毎日、水を飲み、植物を食べ、
空気を吸い、太陽の光を浴びています。
野菜や果物は、
土と水と光から育ちます。
そして私たちは、
それをいただいて生きています。
考えてみれば、
私たちの身体をつくるものの多くは、
もともと自分の外にあったものです。
水。植物。空気。大地から生まれたミネラル。
つまり私たちは、
自然から切り離された存在ではなく、
自然が形を変えながら、
私たちという生命になっている
とも言えるのではないでしょうか。
日本には昔から、
桜を見て春を感じる。蝉の声で夏を感じる。虫の音に秋を感じる。雪景色に冬を感じる。
という暮らしがあります。
自然を「背景」として見るだけでなく、
季節の変化と一緒に暮らしを営んできました。
旬の食材をいただき、花を飾り、月を眺め、紅葉を愛でる。
日本文化には、自然を支配するというより、
自然の変化を感じ取りながら、
そこに自分を合わせていく
という感覚が、さまざまなところに残っています。
私たちは、誰かに何かをしてもらったとき、「ありがとう」と言います。
では、今日飲んだ水には?
呼吸している空気には?
食卓に並んだ野菜には?
暑い日に木陰をつくってくれる木には?
毎朝昇る太陽には?
普段あまり意識しません。
なぜなら、あって当たり前だと思っているからです。
けれど、生命力という視点から見ると、
私たちは毎日、
自然から膨大なものを受け取って生きています。
昨日、お盆の記事で、
「私の命は、私から始まったのではない」と考えました。
今日は、さらに広げてみます。
私の命は、人間だけから受け取ったものでもない。
土がなければ、植物は育ちません。
植物がなければ、私たちは生きられません。
水がなければ、生命は続きません。
生命の歴史をたどっていけば、
人間と自然を
完全に分けることはできないのです。
そして現代科学でも、
自然と人間の健康との関係について研究が進んでいます。
WHOは、自然環境への接触が、
ストレスの軽減、気分の改善、認知機能、身体活動、人との交流
などを通して、健康やウェルビーイングに関係することを紹介しています。
また、緑地とメンタルヘルスについての研究も
世界各地で積み重ねられています。
自然の中を歩く。公園で過ごす。木を見る。緑を感じる。
こうした一見小さな体験が、
人間の心身とまったく無関係ではないことが見えてきています。
ただし、「自然の中に行けば病気が治る」という単純な話ではありません。
自然への接触の種類や時間、
住んでいる環境、運動や人との交流など、さまざまな要素が関係しています。
それでも、自然は健康の外側にあるものではない。
という視点は、
世界の健康研究でも
ますます大切になっています。
ここで、もう一つ
興味深い研究の視点があります。
ただ緑があるだけでなく、自分が自然とつながっていると感じること
そのものも、
ウェルビーイングとの関係が研究されています。
都市の緑地についての2024年の研究でも、
自然との心理的なつながりや生物多様性の感じ方が、
健康や幸福感とどう関わるかが調べられています。
これはとても興味深いことです。
同じ木を見ても、「ただ木がある」と見るのか、
「この木も、私と同じ太陽の下で生きている」と感じるのか。
その体験は、少し違います。
私たちは、
健康になるために何かを買ったり、何かを足したり、
特別なことをしようとします。
でも生命力は、もっと身近なところからも
育つのかもしれません。
朝の光を感じる。風に気づく。水を味わう。植物を眺める。
旬の野菜をいただく。
そして、「今日も自然に生かされている」と思う。
自然への感謝とは、何か特別な思想ではなく、
自分が大きな生命の循環の中にいることを
思い出すことなのではないでしょうか。
そして、もう一つ
大切にしたいことがあります。
自然に感謝するというと、
私たちは自然から「何をもらえるか」ばかりを考えがちです。
でも、受け取るだけの関係ではなく、
私たちから自然へ、何を返すことができるだろう。という問いもあります。
食べ物を無駄にしない。水を大切にする。
必要以上に物を使わない。植物を育てる。
地域の食材を選ぶ。土を大切にする。
小さなことでも、「地球にやさしい選択を一つする」。
それもまた、自然への感謝を
行動で表すことなのではないでしょうか。
今日は一度、外へ出たときに
立ち止まってみてください。
空を見る。木を見る。風を感じる。
そして、一つだけ、
「今日、自然から何を受け取っているだろう?」と考えてみます。
水かもしれません。
木陰かもしれません。
野菜かもしれません。
空気かもしれません。
何か一つ見つけたら、心の中で、「ありがとう」と言ってみてください。
そしてもう一つ。「今日は自然に何を返せるだろう?」
小さな行動を一つ、選んでみませんか。
自然は、
私たちの外側にあるものではない。私たちは、
水を飲み、
空気を吸い、
植物をいただき、
太陽のもとで生きている。人間もまた、
大きな自然の循環の中にいる
一つの生命。自然に感謝することは、
自分を生かしている生命とのつながりを
思い出すこと。
DAY1では、旬 ― 季節とつながる。
DAY2では、いただきます ― 命をいただく。
DAY3では、発酵 ― 目に見えない生命と共に生きる。
DAY4では、お盆 ― 過去から命を受け取る
そして今日、自然 ― 私自身も生命の循環の一部である。
少しずつ、「生命力」というものが、
自分一人の身体の中だけにあるものではないことが
見えてきました。
明日は、「和食の知恵 ― 健康法ではなく、暮らしの文化」について考えます。
旬。発酵。感謝。自然。家族。これまでの5日間で見てきたものは、
実はすべて、日本人が育んできた
「和食」という文化の中につながっています。
明日は、和食とは、何を食べるかではなく、
どのように生命と暮らすかを伝えてきた文化なのではないか
という視点から、生命力を見つめてみたいと思います。
World Health Organization
“Improving health and well-being through nature”
自然環境と心身の健康・ウェルビーイングとの関係についてのWHOの解説。
Landscape and Urban Planning(2024)
“The role of urban green space in promoting health and well-being is related to nature connectedness and biodiversity”
都市緑地、自然との心理的つながり、生物多様性と健康・ウェルビーイングとの関係を検討した研究。
Current methodologies of greenspace exposure and mental health(2024)
緑地への接触とメンタルヘルス研究について、現在の研究方法と課題を整理したレビュー。
生命力ジャーナル
Life Force Journal
― 世界の健康研究から、生命力を読み解く ―