Vol.5日本人が育んできた生命力 DAY2:「いただきます」 ― 命をいただいて、私の命が生きている ―

日本文化と健康 Aug 10, 2026

「いただきます。」
日本では、子どもの頃から何度となく口にしてきた言葉です。

あまりにも日常的なので、
深く意味を考えることなく言っている方も多いかもしれません。

でも今日は、食べる前にほんの少し、
この六文字の前で立ち止まってみたいと思います。

私は、何を「いただいて」いるのでしょう。


🌿 「いただく」という言葉

「いただきます」は、
「いただく」という謙譲語から生まれた言葉です。

もともと「いただく」には、
自分より上のものから、敬意をもって受け取るという意味があります。

そして食事の「いただきます」には現在、
料理を作った人だけでなく、
野菜を育てた人、食材を運んだ人など、
食卓に届くまでに関わった人々への感謝、

そして、食べ物そのものへの感謝が込められた言葉として使われています。

日本では幼い頃から、
家庭や保育園、幼稚園などでこの言葉に親しんでいます。

毎日使っている、ごく普通の言葉。

けれど、考えてみると、
とても深いことを私たちは口にしています。

「私は、いただいて生きています。」


🍎 一つのりんごの向こう側に、何があるでしょう

目の前に、一つのりんごがあるとします。

私たちは普段、
「ビタミンがある」
「食物繊維がある」
「ポリフェノールがある」

といった「栄養」という視点から、
食べ物を見ることが多くなりました。

でも、少し視点を変えてみましょう。
このりんごがここに来るまでに、
種があり、
土があり、
雨が降り、
太陽が照り、

花が咲き、
蜂などの生きものが関わり、
実が育ち、

農家の方が育て、
誰かが収穫し、
誰かが運び、
誰かがお店に並べました。

そのすべてがつながって、今、一つのりんごが、私の手の中にあります。

そして私はそれを食べ、
その食べ物から得たものを使って、今日を生きていきます。

そう考えると、食べることは、
世界とのつながりを自分の中に受け取ること

とも言えるのではないでしょうか。


🌱 植物の生命が、私の生命になる

JLBAが大切にしている
「生命力」という視点から見ると、
食事はとても不思議な営みです。

私たちは、自分だけで生命をつくることはできません。

野菜をいただく。
果物をいただく。
穀物や種子をいただく。
水をいただく。

それらを身体に迎え入れながら、私たちは毎日生きています。

昨日の記事では、「旬をいただくことは、季節をいただくこと」
とお伝えしました。

今日は、もう一歩進めて、
「食べることは、他の生命や自然の恵みを受け取り、自分の生命をつないでいくこと」
と考えてみたいのです。

そうすると、
「いただきます」という言葉が少し違って聞こえてきませんか?


🌏 世界の研究も「食への感謝」に注目し始めています

そして、とても興味深い研究が、今年、日本から発表されました。

2026年7月、学術誌『Appetite』に、日本の研究者たちによる
「Gratitude for Food(食への感謝)」についてのスコーピングレビューが発表されました。

これは、日本と海外で行われてきた
「食への感謝」に関する研究を整理したものです。

レビューでは、食への感謝が、

・より健康的な食行動
・マインドフルな食事
・食品ロスの削減

などと関連して研究されてきたことが報告されています。

一方で研究者たちは、
測定方法がまだ統一されていないことや、
今後さらに研究が必要であることも指摘しています。

つまり、「感謝すれば健康になる」と単純に言える段階ではありません。

けれど、「どんな気持ちで食べるのか」も、
食と健康を考える一つのテーマになり始めている。

これは、とても興味深いことではないでしょうか。


🍃 「何を食べるか」から「どういただくか」へ

健康を考えるとき、私たちはどうしても
何を食べるか。
何を減らすか。
何を増やすか。

ということに意識が向きます。

もちろん、とても大切です。

でも生命力という視点から考えるなら、
もう一つ問いを加えてみたいと思います。

「私は、どんな心で食べているだろう?」

スマートフォンを見ながら急いで食べる一食と、
目の前の食べ物を見て、「今日も私のところまで来てくれてありがとう」
と思っていただく一食。

同じ料理でも、食べるという体験そのものは
違ってくるかもしれません。


🌳 生命力とは、「つながっている」と知ること

私たちは、一人で生きているように感じることがあります。
けれど、一回の食事を眺めただけでも、

太陽、
水、
土、
植物、
微生物、
農家の人、
運ぶ人、
料理する人。

数えきれない存在に支えられています。

生命力とは、
自分一人の中だけにある力ではなく、
世界との関係の中で育っていく力なのかもしれません。

「いただきます」は、そのことを毎日思い出させてくれる、
日本の小さな習慣なのではないでしょうか。


🍎 今日の生命力アクション

今日の食事では、
いつものように「いただきます」と言う前に、
3秒だけ、目の前の食べ物を見てみませんか?

そして、「これは、どこから来たのだろう?」と想像してみてください。

土。太陽。雨。育てた人。運んだ人。料理してくれた人。
そして、目の前の食べ物。

それから、「いただきます。」と言ってみる。

いつもの六文字が、
少し違って感じられるかもしれません。


🌿 今日の生命力のことば

私は、いただいて生きている。

太陽をいただき、
水をいただき、
大地の恵みをいただき、
植物の生命をいただき、
人の働きをいただいて、

今日の私の生命がある。

「いただきます」は、
そのつながりを思い出す言葉。

健康とは、
自分の身体だけを守ることではなく、

自分を生かしているものとのつながりを
大切にすることなのかもしれません。

明日は、「発酵―目に見えない生命と生きる」について考えます。

味噌、醤油、納豆、漬物。

日本人はずっと昔から、
目には見えない小さな生命の働きを
食卓に取り入れてきました。

現代科学が「腸内細菌」「マイクロバイオーム」を研究するずっと前から、
私たちの食卓には、
人間だけではつくれない生命の営みがありました。

明日は、そんな「共に生きる生命力」を探ってみたいと思います。


🌏 世界の研究

2026年7月発表
Kawasaki Y, Nagao-Sato S, Yoshii E, Akamatsu R.
“Gratitude for food as a driver of improved dietary behaviors: A scoping review”
Appetite, 2026.

▶ PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42401398/

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生命力ジャーナル
Life Force Journal

― 世界の健康研究から、生命力を読み解く ―

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