「私には、できないと思います。」
新しいことを勧められたとき、思わず口にしてしまう言葉です。
人前で話すこと。
初めての料理に挑戦すること。
新しい仕事を始めること。
今までとは違う生き方を考えること。
やってみたい気持ちはある。
でも、その直後に、
「失敗したらどうしよう。」
「もう若くないし。」
「私には経験がないから。」
そんな言葉が浮かんできます。
子どもの頃、初めて自転車に乗った日のことを覚えていますか。
最初は怖かった。
何度も足をついた。
ハンドルがふらふらして、思うように進めなかった。
でも、何度かやっているうちに、
ある瞬間、すっと前に進んだ。
「あっ、乗れた!」
そのとき、何が起きたのでしょう。
自転車の仕組みをすべて理解したからでしょうか。
きっと、それだけではありません。
実際にやってみたことで、それまで知らなかった自分の力に出会ったのです。
心理学者アルバート・バンデューラは、「自己効力感」という考え方を提唱しました。
これは、ある行動を自分にも実行できると思える感覚です。
その形成には、実際にやってみて達成した経験が重要であると考えられています。
教育心理学の研究でも、自分で取り組み、できたという経験は、自分の能力に対する見方に関わることが示されています。
つまり、「できると思えるようになってから始める」だけでなく、
「やってみたから、できると思えるようになる」
という道もあるのです。
新しい人生を始めよう。
夢を実現しよう。
そんな言葉を聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。
でも、最初から大きなことをする必要はありません。
いつも作らない料理を作ってみる。
気になっていた人に連絡してみる。
学んだことを誰かに話してみる。
5分だけ、新しいことを調べてみる。
それでも立派な行動です。
そして、思い通りにできなかったとしても、
「やってみたら、ここが難しかった。」
という発見が残ります。
その発見をもとに、次の行動を選ぶことができます。
疲れている日もあります。
気力が出ない日もあります。
思うようにできないこともあります。
そんな自分を否定する必要はありません。
休むことも、助けを求めることも、自分で選ぶ大切な行動です。
そして、少し余裕ができたとき、
「これならやってみたい。」
と思うことがあれば、小さく試してみる。
生命力を発見する機会は、特別な人にだけ与えられているのではありません。
今日の自分ができる、小さな一歩の中にもあるのです。
今日は、「いつかやってみたい」と思っていたことを一つ選んでみましょう。
そして、それを5分以内でできる行動にしてみてください。
例えば、
「料理を学びたい」なら、作ってみたい一品を決める。
「誰かとつながりたい」なら、一通メッセージを送る。
「自分の人生を考えたい」なら、ノートに一行書く。
実際にやってみたら、
「やる前と、何が違った?」
と自分に聞いてみてください。
答えは、あなた自身の体験の中にあります。
研究参考資料
Usher, E. L. & Pajares, F. (2008). Sources of Self-Efficacy in School: Critical Review of the Literature and Future Directions. Review of Educational Research.
※研究は主に教育場面での自己効力感に関するものであり、あらゆる人生の挑戦に同じ結果を保証するものではありません。
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