「今度の日曜日、ちょっと出かけてもいいかな?」
そう言いかけて、言葉を飲み込んだ。
夫は仕事で疲れている。
子どもにも予定がある。
母のところにも顔を出したい。
洗濯も、買い物も、やっておかなければ。
そう考えているうちに、
「まあ、今回はやめておこう。」
と、自分で自分を納得させてしまった。
行きたかったのは、以前から興味のあった小さなワークショップ。
たった2時間のことなのに、どうしてこんなに遠く感じるのでしょう。
家族のために食事を作る。
子どもの成長を見守る。
親のことを気にかける。
仕事で求められる役割を果たす。
その一つひとつは、決して無駄なことではありません。
誰かを大切にしてきた時間は、自分の人生の大切な一部です。
でも、いつの間にか、
「私がやらなければ。」
「私が我慢すればいい。」
という言葉ばかりになっていたとしたら。
少し立ち止まってみたいのです。
「私自身は、どうしたいのだろう?」
ここで、一つ興味深い研究があります。
心理学の「自己決定理論」では、人が自分の意思で選んでいると感じられることを「自律性」と呼び、心の健やかさや意欲に関わる重要な要素として研究しています。
自律性とは、何でも自分一人で決めたり、他人のことを考えずに行動したりすることではありません。
家族を大切にすることも、仕事を続けることも、自分がその意味を理解し、納得して選ぶことができます。
同じ行動でも、「私がやらなければならない。」と思っているときと、
「私はこれを大切にしたい。」
と思っているときでは、自分の感じ方が違うことがあります。
では、自分のために時間を使うことも、人生の大切な選択として認めてよいのではないでしょうか。
例えば、あのワークショップ。
「行けない」と決める前に、家族に話してみたらどうでしょう。
「日曜日の午後、2時間だけ出かけたいんだけど。」
すると、「いいよ。行っておいで。」と言われるかもしれません。
あるいは、予定を調整する必要があるかもしれません。
思い通りにならないこともあるでしょう。
でも、自分の希望を言葉にしてみなければ、何ができるのかも分かりません。
相手に頼むこと。
相談すること。
一緒に方法を考えること。
それは、家族を大切にしないことではありません。
家族とつながりながら、自分の人生にも関わっていくことなのです。
自分の人生を生きるということは、家族を置いてどこかへ行くことではありません。
今まで築いてきた暮らしの中で、自分の気持ちにも耳を傾けること。
自分が大切にしたいものを、誰かと分かち合うこと。
そして、必要なときには助けてもらうこと。
JLBAが考える自立も、一人で何でもできるようになることではありません。
人とつながりながら、自分自身で考え、選び、行動していくことです。
「私のことは後でいい。」
そう思ったとき、
「私のことも、大切にしていい。」
と、もう一つの言葉を加えてみませんか。
今日は、家族や仕事の予定とは別に、
「私がやってみたいこと」
を一つ考えてください。
そして、できれば誰かに言葉にして伝えてみましょう。
「今度、これをやってみたいんだ。」
それだけでも大丈夫。
自分の希望を自分の言葉で伝えること。
そこから、新しい会話が始まるかもしれません。
研究参考資料
Ryan, R. M. & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist, 55(1), 68–78.